待っている vol.1
 
 
 
■ コーヒーを入れようとすると、紙がない。
 仕方ないので、昨夜使った奴を洗うことにした。
 
 
 
■ キングコングの絵葉書を手元で見ている。
 ひとりの女の為に、エンパイア・ステート・ビルによじ登り、全世界の非難を浴びながら、空しく地上に引き戻された、カワサキのW1みたいな愚かな猿の物語である。
 ジャズメンがネクタイをしていた頃の黒人のように、あんぐりと口を開けた一匹のゴリラが虚空を睨み、何事かを叫んでいる。
 その掌の中には、護るべきヒロインが横たわっている筈なのだが、ここからは見ることは出来ない。
 斜めになったNYの空を、二枚羽の飛行機が旋回している。
 じきに軍の攻撃が始まるのだ。